2:口付ける(できればやさしく)
花男・総つく
司が牧野を忘れるという最悪の事態が起きた。
俺たちは、すぐに思い出すと安易に考え『頑張れ』と言い続けた。
結果、牧野を追い詰め失踪させてしまった。
あいつの逃亡癖は知ってはいた。
なのに大丈夫きっとすぐ思い出す、そう思ってあいつをけしかけ追い詰めた。
今なら分かる。それがどんなに辛い事だったか。
あいつはいつも頑張ってた。
それなのに更に頑張れと言われて牧野は、いつも人のことばかり考える。だから・・・
パンクしたんだろう・・・。
それにあの頃・・・司は海という女を運命の女と思い込んで傍に置いていた。
それも牧野を追い詰めた原因だったんだろう。
後で聞いたことだが・・・あの女は、牧野に余計なことばかり吹き込んでいたらしい。
牧野が最後に司に会いに来た時、あの女が何か決定的な何かを言ったようだ。
詳しくは分からない。誰もその場を見ていないし聞いてもないから。
後日、優紀ちゃんが言っていた。
【あいつとあたしの運命は重ならなかったんだよ。あいつにとってあたしとの恋はその程度で、
簡単に無かった事にできたんだよ。
あたしは代わりの利く恋なんて要らない・・・もう・・・いいんだ・・・疲れた。】
そうポツリと呟いて泣いた後何か決意めいた顔をしていたんだって、たぶんその時決めたんだろう。
みんな探した。でも見つけられなくて。
それからもうすぐ3年たつ。
大学に入って少しずつ増えてくる時期家元としての付き合い的な仕事。
学生であってもちょっとした茶会には出なくてはならなくて・・・今日もその一つだった。
終わってから愛車に乗って帰る事にする。
こんなトコに残ってたらイソイソと狸達が寄ってくる。西門というブランドに。
「はぁ~、まっすぐ帰るのもなぁ~・・・」
何気に入った駐車場で呟いて何気なく見た歩道の先・・・探していた女が・・・居た。
考えるより体が勝手に動いた。素早く車から降りて気付かれないようにでも早く走り寄る。
周りのやつが色めき立つがそんなの見る余裕なんてない。
今を逃がすとまた見失ってしまう俺の勘がそういっている。だから、あいつを牧野を捕獲する為に走りより俺の腕の中に・・・捕らえた。
考える事も無く本能のまま口付る。
「ちょ!!何すんのよ!!久しぶりって感動も何もなく何考えてんのよ!!この・・・エロ門!!」
久しぶりに聞く声。言いぐさ。懐かしくて切なくて・・・ああ・・・俺・・・牧野の事好きだったんだ。
こうなって初めて自覚する。
俺の本気の恋。ずっと求めていたもの。ダチの女には手を出さない。
でもいいよな?もういいだろ?
だって・・・司お前まだ牧野の事忘れてるんだから・・・なら俺が牧野幸せにしてもいいよな?
心の中で言い訳めいたでも俺の本心を呟く。
「何すんの?キスしただけだろ?・・・薄情者のつくしちゃん?」
「なっ!!」
「俺が、俺達がどれだけ心配したと思ってんだよ!?お前何も言わないで一人で考えて完結して失踪して・・・」
「・・・ごめん・・・でも・・・あの時はもうあたしにはいっぱいいっぱいで・・・道明寺とはダメになっちゃったし、
あれ以上皆の傍に居るのにもあの頃のあたしじゃ耐えられなくて。
だから少し離れて考えたかったの・・・」
「・・・もういいのか?結論でたのか?また・・・どこかに行くのか?」
俺の俺らしくない弱弱しい(俺にしてみれば)な声にフルフルと首を振る牧野。
「ぷっ・・・何か西門さんらしくないよ?弱ってる?あたしはもう大丈夫だよ・・・
そろそろ戻ろうかな~って思ってたし?でも、みんなに合わせる顔無いなぁ~って悩んでただけで・・・」
牧野の言い分を途中で遮って抱きしめてキスする軽めの優しいキス(俺にしたら?)
「ちょっと!!だから何すんのよ妊娠したらどうしてくれんのよこの
エロ門!!!!」
真っ赤になって怒る牧野。そんな懐かしい反応に笑ってしまう。
「へ~つくしちゃんはキスだけで妊娠できんの?ま、もしそうなったら俺が責任もって貰ってやるから・・・
俺と一緒に帰ろうな?」
フェロモン放出しつつ言ってやるとこれ以上は無理だろって位真っ赤になってる牧野。
「貰ってって何言ってんのよ!!無理だし!!・・・でも・・・帰っていいのかな?」
「・・・帰っていいも何も・・・みんな待ってるぜ?それに貰うっていうのも俺本気だから?
覚悟してねつくしちゃん?」
フェロモン載せてウィンク一つ。
「あたしにフェロモン出すなぁ~~~!!・・・・・・・・・・・・・・でも・・・
ありがと・・・じゃあ・・・帰る用意しないとね?」
真っ赤な顔を伏せて何の呟く小さな声。でも俺には届いてるよ?
俺は本気だからほんとに覚悟してね?つくしちゃん♪
俺の本気の恋だから・・・
終われ。
・・・あれ?何かな?微妙なものになったなりよ・・・・・・・