この学校は普通とはかけ離れた次元に存在してる・・・
保健室は戦場です。
保健室…それは、学生にとって昼寝やサボリの場(主に総司とか)…学校内での怪我の治療等を行う場所…普通はね…。
だが、この高校の保健室は、違います。
気を抜けば…殺られます。確実に…実験体にされます。
その為に、保健室に訪ねる生徒は、ほぼ居ない。
最近来るのは、胃薬をもらいに来る
近藤勇校長位だ。
そして今日も近藤校長は、保健室の扉を潜るのだった。
「おや、近藤さんじゃないですか…あぁまた、胃薬ですか?」
この学園の保健室の主、山南啓介が、入ってきた近藤を見て目を細めて(胡散臭げな)笑みを浮かべて言った。
保健委員で、当番の為備品整理をしていた山崎烝は、サッと顔から血の気が引いた。
サクサクと話を進め、近藤に怪しいお茶を勧める山南に、嫌な予感がするのだった。
遠目に見ても近藤に進めたお茶は、赤いからだ。
(土方さん…俺はどうすれば良いんでしょうか!?)
そんな思いが届いたのか、保健室の扉が勢いよく開いた。
「あのさ…山南さん…妙なもの近藤さんに…飲まさないでよ?近藤さんと千鶴以外のヤツなら遠慮無く実験体にしてもいいけどさ…土方さんとか…」
入った早々に近藤の耳を塞ぎ、そう捲し立てる総司。そんな総司を変わらない笑顔で見詰め舌打ちをする山南。
山崎は、安堵の溜め息を吐いて、サクサクと避難する事にした。
理由は、捲き込まれればただでは済まない、下手をすれば自分が実験体になってしまうからだ…。
「土方さんを探すか…」
廊下に出て一息ついてこの争いを止められるであろう人物…土方を探すため一先ず職員室を目指す山崎だった。
「しかし…沖田くん…山南さんでは無く、山南先生でしょう?私は、保険医であっても教師の1人ですよ?」
総司の怒りをサラリと笑顔でかわしつつ尤もらしい事を言うが途端に総司が嫌そうな顔をした。
「へぇ~、教師の端くれじゃなくて厄介なマッドな鬼畜じゃないんですか?
皆そう思ってますよ?僕含めて(邪笑)」
嫌そうな顔で、毒を吐く。
が、山南は、負けない位の黒い笑顔で笑っている。
そんな2人の間に挟まれオロオロしつつ、来なきゃ良かったと後悔する近藤だった。
そんな中に新たな闖入者がやって来た。
「あ~れ~?お揃いで何をしてらっしゃるんですか?っていうか、ここ保健室なのになんでどす黒い空気が渦巻いてるんです?」
入ってきた早々にさらっと毒を吐く千姫。
その登場に舌打ちをする総司と山南。
近藤に至っては、助かった!!というような顔で千姫を見ていた。
「黒くても仕方ないでしょ?ここの主が真っ黒いんだから?」
総司がそう言うと千姫は、それもそうね~と、いう感じで頷いた。
山南は、心外そうに大袈裟に溜め息を吐いた。
「…で、貴女は、なんの用事があってきたのです?見たところ何ともないようですが?」
これ以上話しいても実のある会話にはならないと話を切り上げることにした山南。
その様子を鼻で笑う総司。ピクッと頬が引きつったが流した山南、千姫は、その2人にニッコリと笑って近藤を振り返った。
「あの~近藤さん…土方先生が暴れてますよ?止めてくれません?」
と、笑顔で近藤に告げる。近藤は、サッと血の気がひいた。
そして、暴れるに至った元凶である総司を見る。
「……総司…お前今度は何をしたんだ?」
蒼い顔で問うと、総司は愉しそうな顔で笑っている。そして、総司が口を開こうとした時勢いよく扉が開いた。
ズダン!!パリン
勢いつきすぎて扉に取り付けられたガラスが割れた。
「そぉ~う~じぃ~テメエいい加減観念して、生徒指導室で説教と反省文を提出するまで帰れないと思え!?」
地の底から響くような声で言った土方が、山南の手元の怪しいお茶を見て顔色が変わった。
「おや、土方君いらっしゃい、困った生徒相手だと苦労しますね~。
私も今現在進行形で困らせられているから、心中お察ししますよ(薄笑い)」
土方の様子に慌てず騒がず、観察するかのように見詰めて言った。
そうしつつコッソリお茶を始末しようとするが、シッカリ土方の目には見えていた。
「山南さん…アンタ近藤さんに何を飲ませる気だったんだ!?今隠したのはどう見ても茶じゃねえだろう?」
山南の出方を窺いつつ問いかけてはいるが、顔が無駄に凶悪になっている。
頭の痛い問題が2乗になった為だが、当の元凶の2人、総司と山南は、飄々としている。
「おやおや、コレは…私が調合した(実験中とも言いますが)良く効く漢方薬(副作用大ですけどね)ですよ?心配はありませんよ?(ちょっと吸血衝動と日に弱くなりますが命に別状無いですし?たぶん)」
ふふ…っと笑って言う山南に、頭を押さえる土方。
「俺の気のせいじゃなけりゃ…山南さん…アンタ、間に何か良からぬ事を言ってなかったか?」
頭痛を押さえながら言うと、心外ですね~と、山南が言った。
総司はその間に、近藤を保健室の外に避難させていた。
そう…これからココは、
修羅場に変わるのだから!!
総司が保健室に戻っていった瞬間、中から何かが派手に壊れる音がしたが、近藤は入ったらダメという本能の警告に従って校長室に戻った。
千姫も、土方の登場にサッサと窓から退散していた。
「あ、今日は保健室か…」
「…って、うちの保険医普通にあり得ねえし、三つ巴アリだろ?」
校内、校庭等では、生徒達が響き渡る轟音と破壊音について話している。
「いい加減逝ってくださいよ?」
総司が言えば、不敵に笑う山南が
「それは聞けませんよ?」
と、言う。
が、総司と山南は、口で言い合うけれど、攻撃対象は土方だ。
厄介な相手は先に潰そうということらしい。
そんな2人の攻撃を冷静に捌きつつ怒号をとばす土方。
朝からこんな状態が割と日常化している。
既に放課後になるが…
保健室の喧騒はまだ………
続いている。
終わりw
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職員室から昇降口に向かう教師2人、左乃助と新八。
「なぁ~左乃~」
「あ?何だ?」
「保健室のヤツ等止めんでも良いんかな?」
素朴な疑問とでも言うように、新八が問いかけると左乃助は、大袈裟に溜め息を吐き肩を竦める。
「止めたきゃ止めろよ?俺は、巻き込まれるのが分かってるのに進んであの輪に飛び込む気はねえよ!?」
そうキッパリと言い切った。それを聞いて、巻き込まれる所を想像して身を震わせた新八。
誰でも自分の身が大切である。
サッパリと保健室の騒動を気にする心に蓋をして戸締りを朝から騒動に参加中の土方に押し付けて帰る事にした。
そんなたぶん平凡な?日常は過ぎていく。
そして、保健室の利用者は益々居なくなるのである。
まじ終われ。
保健室のお世話になるくらいなら・・・
這ってでも授業に出ます!!