原田家とゆかいな仲間たち
~天霧さんのお使い~
千姫の額には見事な青筋が浮かんでいた。
理由は、千姫の側に仕える者ならば知っている。
というか…理由は1つしか無い。
「…あの馬鹿風間!!ま~だ諦めないのかしら!?千鶴ちゃんの幸せを邪魔するなと…ふふふふ…何度言えば解るのかしらね?」
低い笑い声を響かせ呟く。
ハッキリ言って不気味で怖い。
回りの者は引いている。
「天霧さんを呼んで?」
クルリと、慈愛の笑顔で言う千姫の後ろに般若が見えるのは…たぶん見間違いでは無い。
青ざめながら天霧を呼びに我先にと部屋を後にする側近達が見受けられた。
ワラワラとやって来る千姫の側仕えを見て取り・・・
『……またか…逃げたい』
と、こっそり思う天霧だが、根が真面目な為逃げたい思いに蓋をして、千姫の元に向かう。
呼び出し理由は分かるが、一応念の為…である。
分かっているからと、勝手に向かえば、千姫が臍を曲げかねないという理由もある。
「風間…頼むからそろそろ落ち着いてくれ…」
此所には居ない知人(?)に願う天霧だった。
千姫の屋敷に着いた天霧。
だが、着いて数分屋敷の前で固まっている。
たぶん絶対間違い無く…千姫から出ているであろう邪悪としか言い様の無い黒い禍々しい気が、辺りを覆っていたからだ。
『・・・入りたく無い!!って無事に帰れない様な気がしてきた・・・』
心中ぐるぐるとそんな思いが巡る。
だが、悲しいかな中間管理職((笑)?)上の発言招集には、逆らえない。
意を決して中に入る。
千姫の顔を見て、出た第1印象・・・
『…睨まれ様と、追われ様とも逃げればよかった。』
である。
門前で感じた気よりも、はるかに邪悪なモノを感じた。
「お、御呼びにより参上致しました。」
視線を逸らし(直視は危険と本能が警告を発しているから)、当たり障りの無い事を言った。
内心ドキドキだ。
普段なら味わう事の無いプレッシャーに見舞われている。
千姫のは、ニコリと、慈悲深い笑みを口元に称えているが、目は、獲物を狙う肉食獸の様だ。
そんな千姫の口から出たのは、
「ふふふふ…天霧さん…良く来てくれました。
お願いと、言いますか…命令です。
直ちに千鶴ちゃんの所に行ったバカザマを半殺し…いえ、それじゃ甘いわね…ん~九割がた殺しで連れ帰って来て下さい」
というものだった。
盤若を背負う千姫を前に、嫌は無い。
反射で頷きその場を後にする。
「だんだん黒くなってないか…千姫?」
冷や汗を流し呟く。
「風間をそうそうに連れ帰らなければコチラが危うい・・・」
溜め息混じりに言って、原田家に、向かうのだった。
天霧さんの憂鬱と、苦労と、ストレスは、まだまだ終わらない…。
終われ。
後書き?
鬼で一番苦労人だと思う。
真面目すぎる為に何時も貧乏クジを引いている様な気が…したり、しなかったり(笑)
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